なのはの登場率の低さが異常

〜猫耳美人姉妹?…………コスプレってやつか?〜





 †


 「さて。闇の書や守護騎士達の行方……君には聞きたい事が山ほどあるんだ。話してもらうぞ?」

 「………………………………………………………………………………………………」

 地平の彼方まで続く氷の大地に、黒衣の少年が油断無く愛機を構え立っている。
 彼の前には灰色の外套を来た女性が、疲弊し膝をついていた。

 ふたりの周囲には体長6メートルはある銀狼が、傷こそないものの完全に意識を失い倒れていた。
 それも1匹や2匹ではない。少なく見積もっても20匹は下回らないだろう。
 大きな個体は10メートルはある銀狼らを気絶させ、行われた事は語るまでもない。

 「文化レベル0の世界にサーチャーを設置したのは正解だったな。
  もっとも、蒐集が終わる前に急行するつもりだったんだが」

 「………………………………………………………………………………………………」

 女性は腰にも届きそうな白髪を後ろに払って、徒手空拳のまま立ち上がった。
 僅かに重心を下げて踵を浮かせ、すぐにでも動けるように姿勢を整える。

 しかし、それは戦う為ではない。
 少なくない数の銀狼との戦いで、すでに彼女の魔力は残り僅か。
 相手がクロノ・ハラオウンだという事も非常にマズイ。
 己の正体を隠さなければならない以上、彼女は愛機たるデバイスを使えないのだ。

 だから、戦うのではなく、逃げる。

 彼女に残されている選択肢は、もはやそれだけしかなかった…………



 女性…………その正体は燕条 弓弦。現在ライブで大ピンチです。


 †


 顔の半分をゴーグルで隠しているし、ものっそい頑張り、恥を忍んで変身魔法もしている。
 だけど流石に魔力光までは誤魔化せないし、そもそもデバイスを用意できなかった時点で
 失敗しているようなもんさね。


 『んじゃー僕はちょーっと遠出して蒐集してくるさねー』

 『はい。夜明けに此処で』

 『ヘマすんじゃねーぞ』

 『余裕さね〜、これでも通信北斗神拳3段の実力者だからね』


 ああ殴りたいね。1時間前の余裕ぶった僕をぶん殴ってやりたいね!!何が余裕かね僕のバカ!?
 まずいマズイって!いっそマジで秘孔とか突いてみるかね!?

 …………いや落ち着こうね?

 現状で使える魔法発動の為のデバイスはフェイルノートのみ。
 インデックスには隠蔽と変身の常時発動させてるし、これ以上はちと僕の脳のほうが保たない。
 単純な魔力弾を掌から射出する事くらいなら可能だけど、それでクロノに勝てるか自信ないね〜?


 ────分割思考。1番から3番を演算処理に残して、4番から6番まで身体調整にまわせ。
 ────分割思考。7番から12番は外界情報から最適戦略の計算。


 ゆっくりと全身に力をこめて立ち上がる。
 疲労はすでに満足に戦う事も難しいほどに蓄積されている。
 霞む視界に笑う膝。軽く握った拳を構えるだけで一苦労だね。

 (それでも、此処で終わるわけにはいかないからね?)

 残り僅かな魔力と疲弊しきった身体で僕は、逃げる為のシナリオを構築し始めた。

 (簡単な話さね。クロノと覗き魔サーチャーの目を誤魔化すようにステルスと転送の並列作業。簡単さね。
  要は確実な逃走ルートをフェイルノートと1番2番が構築するまでの時間稼ぎ。簡単さね!)

 心が折れないよう自分に強く言い聞かせて、ふらつく身体に活を入れる。
 大丈夫だと誤魔化して、クロノの僅かな動きにも注意して───────────


 瞬時に、クロノ・ハラオウンが消えた。


 「…………はえ?」

 何が起こったのか理解できなかった。
 突然クロノの身体を上下に挟むように魔法円が発生したかと思えば、次の瞬間には閃光のように
 その姿を変えて何処かへと飛んでいってしまった。

 魔法光の色は薄紫。その色に該当する魔法使いを僕は3人しか知らない。

 構えていた腕から力が抜けて、だらりと下がったのも仕方ないさね。
 …………そしてふつふつと怒りが湧いてくるのも仕方ないさね。

 「オイこら猫娘2人組み。ようやくまともな戦闘シーン突入だったのに邪魔するとはどういう了見さね?」

 「下書きの段階ではやったら長い戦闘描写だったのにね〜」

 「無駄で無意味な描写も多かったけどね。てかあの犬に戦闘は無理だって」

 何もなかった筈の空間から溶け出すように姿を現す変態仮n……げふんげふん!
 悪趣味な仮面を手に提げて、へらへらと笑いながら降りてくる猫娘2匹。

 てかメタ発言はやめてほしいさね。僕も人の事は言えないけれどもね!
 じろりと睨んでも平気な顔で笑っていやがるね。誰か僕に眼力をぷりーず。

 「んで、リーゼさん達は何で此処にいるんさね」

 猫娘、リーゼアリアさんとリーゼロッテさん。2人合わせてリーゼさん。
 養父さんの使い魔であり僕とクロノの師匠であり…………まあ一応は恩人。
 アリアさんに関しては素直に尊敬しているけど、ロッテさんに尊敬って単語は素直に結べないね。
 原因は普段の素行とかその辺にあるというか確実にそれ以外にないんだけどね!

 深く考えると頭が痛くなってくる…………と言うかもう痛くなってきたさね。
 こめかみを親指で揉みながら、流石に助けられた手前いつまでも睨んでいるのも人としてどうかと
 思って眉間の皺はそのままだったけどとりあえず睨むのは止めた。

 「んー私は連絡したほうがいいって言ったんだけど…………」

 「クロすけがサーチャーの手配してたからさー、こりゃカチ合うなと思って助けに来たってわけ」

 「成程ね。つまりロッテさんの悪戯って訳さね?」

 頭痛が酷くなってきたさね…………ごめん僕にも止められませんこの頭痛。
 アリアさん苦笑するくらいなら始めからロッテさんを止めてください。

 「ホントは弓弦とクロすけの成長を見たかったんだけど、流石に今のコンディションじゃキツイと思ってさ」

 「まあ、渡す物もあったしね」

 …………この2人は本当にこの一件を企んだ側の人間なんだろうか…………
 その悪戯や用事ついでで全部がご破算になっていたらどうする気だったんだろうね。

 いい加減に立ってるのも辛くなってきたので、どっかりと雪原に座り込む。
 念話でインデックスに隠蔽と変身魔法の解除を命じて、灰色の外套から煙草とライターを出して咥えた。

 「渡す物っていうと…………ああ、アレ完成したんさね?」

 100円ライターは偉大さねーとか思いつつ聞いてみると、それまでの巫戯けていた顔が嘘のように
 真面目な顔になって、一枚のカードを手に取り出した。

 「ええ。デュランダルの製作を優先させてたからやっと、て感じね」

 「全部で6発。通常より大口径になっちゃったけど、そのへんは弓弦のほうで調整して」

 ういういーと返事して、フィルター近くまで吸いきった吸殻を携帯灰皿にねじ込んだ。
 もう今日はイロイロあって疲れたさね。
 蒐集のほうも2匹で1頁くらいになったし、これで10頁ちょっと。
 流石に竜種ほど効率は良くないし、管理局の事を思うと今みたいに疲弊しちゃうような蒐集の
 仕方は考え物さね。まあ危険は少ないんだけどね。

 クロノの目もないし転送ポート使ってさっさと帰ろうかと転送の準備をして


 「それで弓弦、父様と何を話したの」


 …………アレかねー、今日は厄日とか疲労イベントのバーゲンとか確変とかそんな日なのかね?


 †


 …………おはようございます。私、高町なのはです。
 いつものように弓弦さんにもらった体力作りのメニューを、今日はフェイトちゃんと一緒にやったの。
 あう〜…………公園で弓弦さんに魔法の練習を見てもらってるって言ったら、フェイトちゃんの走り込みが
 加速しました。すごく速いです。着いて行くのが大変です。

 でも私が遅れてるって気付くと待ってくれて、置いて行ってごめんって謝られちゃいました。
 ははは………着いて行けなかった私が謝るべきだと思うんだけどなー…………
 早く弓弦さんに会いたいんだねって言ったら真っ赤になって照れてました。かわいいなぁ♪


 「…………(ぷか〜)…………」


 それで弓弦さんが待ってる公園に着いたのですが…………どうしよ〜弓弦さんが壊れてるよ〜…………
 いつもの場所で手摺にもたれて座ってたんだけど様子が変です。口と鼻から煙草の煙が出てます。
 何だか目は虚ろだし、黒に染めた髪が白に戻っちゃってるし、目の下に凄い隈ができちゃってます。

 慌ててフェイトちゃんと駆け寄って声をかけても返事がありません。
 何か小さく呟いてるみたいだったので耳を近づけて聞いてみると───────────


 「いやだから最近は忙しいからね? そりゃ毎日のように本局には行ってるさね? 仕事もあるしね?
  けど用もないのに養父さんの執務室に行ったら邪魔になるし、リーゼさん達だって仕事があるしね?
  え? いやそんな昔の話を持ち出されてもね? ……釣った魚ってロッテさんね、あれは事故さね?
  酔って前後不覚だったしむしろ僕が食われてましたよね? 責任取れって……何で近づいてくるんさね?
  バインド!? ちょ何で服を脱がすんさね!? 初めてじゃねえだろ大人しくってアンタそれでもメスかね!?」


 …………あー、何でだろ。急に涙が…………
 弓弦さんは足を投げ出した格好から段々と体育座りになっていって、アルマジロみたいに丸くなっちゃって
 それでも呟きが止まりません。あ、また涙が…………

 どうしてそうしようと思ったのか、私達にも解らないけど…………
 何となくそうすれば弓弦さんが元気になってくれるような気がしたの。
 フェイトちゃんと力強く頷いて─────────





 ふと自分が体育座りをしている事に気付いた。
 そもそも今は何時で此処は何処なのかすら曖昧だったので、呆けた頭で記憶を発掘していく。

 (え〜っと、確か昨日クロノに見つかってリーゼさん達に助けてもらって……イロイロされて)

 とっかかりさえ掴めば、後は芋蔓式に記憶も蘇ってくる。
 そーだそーだと胸中で手を叩いておく。お約束な気がするからね?

 (それで解放されたのが朝方だったから、もうこのまま公園でなのはを待とうって思ったんだっけね)

 完徹だったからそのまま此処で寝ちゃったのかね。道理で寒いわけだね。
 脳味噌が未だに呆けたままではあったけれど、何とか記憶の発掘には成功。
 成功して、何やら自分の頭と手に違和感を感じる。
 こう……何と言うか頭の上に何かが乗ってるような、手が暖かいような?

 何事かと頭を上げて、


 「あ、気がついたー」

 「弓弦さん。だ、大丈夫?」


 僕の頭を撫でるなのはと、僕の手を包むように握るフェイトがいた。

 …………ナニコノ状況?


 †


 ふらふらと倒れる寸前といった様で、本局の廊下を歩くアリアとロッテ。

 「うあ〜…………ちょっと頑張りすぎた…………」

 「ちょっと無茶だったわよね…………」

 「ん…………早くシャワールーム行かないと…………」

 「うぅ…………っと…………危な…………零れそう…………」

 ナニを頑張ったり無茶したのか、ナニが何処から零れそうなのかは秘密である。
 ただ弓弦は最後まで抵抗したとだけ明記しておく。

 有罪デスカ? 無罪デスカ?

 残念ながら忍者さんに怒られるので、何があったのか知りたい人は以下の空白を反転させるか
 アドレスの最後に「/hiden」と付け足してください。

 
 
 ごめんなさい。なんもありません。  「まあ最後までしてないし、セーフだよね?」  「今どき珍しいくらい初心ですものねー」  …………さっきまでの妖しい会話はなんだったんだよオマエラ…………  †  闇の書、残り128頁。  †  あとがき。  羽山:特に言い遺す事はありません。では(遁走   律:待てい。  羽山:嫌だあぁ!離してくれぇぇえ!   律:いやそこまでビビるならこんなん書くなよ。  羽山:ついカッとなってヤッた。今では反省している。   律:お前は一昔前のバカか?  羽山:っけ! どーせ私はギリでゆとり範囲外なだけの餓鬼ですよー   律:その言い草がすでに餓鬼くせえと自覚してくれ。頼むから。  羽山:どーでもいいけど「狼と香辛料」面白いね。   律:それあとがきに書く事じゃないからな?  羽山:1クールと言わずに4クールくらいやればいいと思うよ?   律:原作しか知らんがな私…………  羽山:えーはい。落ち着きました羽山でっす!   律:見苦しい所をおみせしてスミマセン。後でシメますんで勘弁してください。  羽山:( ゚ Д゚)………えぁ?
押してもらえると大変に嬉しいです。