なのはの登場率の低さが異常

〜女の子がフェレットと話てた?病院へ行け〜





 †



 『それで闇の書の蒐集はどうなっている?』

 「予定よりかなり進んでいます。やはり竜種のリンカーコアは質がいいみたいです」

 『そうか。だが転送ポートの使用記録を誤魔化すのにも限度がある。ほどほどにな』

 「解っています。それと先のPT事件で見出された魔道師についてですが…………」

 『うむ……予定外ではあるが君の判断に任せよう。くれぐれも慎重に進めてくれ』

 「はい…………では報告は以上です」

 『解った。引き続き頼むよ。……ところで弓弦。たまにはこっちに顔を出さないか? リーゼも会いたがっているよ』

 「……遊びたがっているの間違いだと思うさね養父さん……」



 †


 時空管理局艦船アースラ。
 歩いては行けない隣の世界を渉る船は、羽を休める船場に帰りつつあった。
 休み無く運用し続けたら壊れてしまうのは人も機械も同じ。
 船も乗組員も仕事を一段落させようとしていた。

 その艦内を歩く、藍色の作務衣を来た青年と黒衣の少年。

 「無限書庫の整理か。君はどう思ってるんだ?」

 「有用ではあるけどね。ぶっちゃけ死ねと言われてる気がしてならないね」

 クロノ・ハラオウン執務官と燕条弓弦。
 さして珍しい組み合わせと言うわけでもなく、ここ半年は2人が会う頻度も高い。

 「君が過労死するとは思えない。その前に逃げ出してサボるだろ」

 「当然さね。ま、期日が設定されているわけでもないしね。気長にやるさね」

 何処までも呑気に話す友人に、クロノは苦笑するしかない。
 思えばこの男とも長い付き合いになったものだ。
 同じ人物に師事し、自分が彼の養父の元で修行している頃から、彼は茫洋としていた。
 基本的に世話好きな性質なのだろう。向こうでの生活では助けられる事も多かった。

 「君の情報処理能力は飛び抜けているからな。正式に司書として働けばいいのに」

 「実働時間3時間で提督並みの給料が貰えて、更に昼下がりの情事を楽しめる職場だったら即決だけどね」

 「そんな職場があるわけないだろう」

 と、こうしてクロノが誘いをかけては、いつも適当にはぐらかされている。
 何処まで本気なのかは解らないが、ある意味で自分に正直なのかもしれない。

 掴み処が無く本心をあまり語らない。
 友人として少し寂しくもあるが、それが彼の自然体なのだから仕方ないとクロノは思うようにしていた。

 長い廊下を渡って、着いたのは客人用の部屋。
 あまり使用する機会のない部屋だったが、この半年は住む住人を得て役割を果たしている。

 「フェイト、クロノだ。ちょっといいか?」

 『あ、はい』

 その住人から許可をもらって、扉を開ける。
 椅子に座って、明日の裁判での応答の為に用意されたデータを読んでいた少女は振り返って。

 「よ。元気かね?」

 「ゆ、弓弦さん!? いたっ!」

 片手を上げて挨拶する弓弦を見て、慌てて立ち上がろうとして机に足をぶつけていた。
 同室にいた使い魔はそれを無視しているわけではないのだが、何やら散々迷ってから主人が倒した椅子を起こした。

 「…………元気そうさね」

 いきなりコントを見せられたほうとしては微妙な心境になるのも仕方ないだろう。
 演じる事になった少女にしても不本意ではあるのだろうが。

 「……弓弦さんは、今日はどうしたの?」

 「いや用があったわけじゃなくてね。明日は裁判だろ? ちょっと気になってね」

 別になんでもないんだと言う弓弦に、少しだけ落胆しているフェイトだが男共はまったく気付かない。
 おお罪深きもの。汝の名は鈍感。

 「少なからず係わった事件だからね。出来るだけの協力はするさね」

 実際、明日の裁判には弓弦も証人として参加する予定になっている。
 あの事件に係わった、一番最初の管理局に近い人間なのだから、それも当然と言えば当然なのだが。

 「ぶっちゃけ僕がいなくても事件は解決してたと思うんだけどね」

 相変わらずの茫洋さで言う弓弦だが、彼の存在があったおかげで管理局も先の事件に気付いたわけで。
 そういう意味ではまったく無駄ではなかったのだが、やはり不可欠だったかと言えば微妙だ。
 彼を抜いても、ユーノになのは。それとクロノと艦船アースラ。これだけの面子がいれば解決できたであろう。

 「でも───────────」

 「ん?」

 「……弓弦さんは私を護ってくれました。母さんにいらないって言われたときも、私を支えてくれました……」

 「………………………………僕は好き勝手に行動してただけさね」

 嬉しそうなフェイトの視線に耐え切れないのか、弓弦はそっぽを向いてしまう。
 向けた視線の先にいたクロノがニヤニヤと笑っているのが気に入らないのか舌打ちしていた。

 「相変わらず褒められたり感謝されるのに慣れてないみたいだな」

 「クロノ執務官殿? ちょっと訓練スペース行くかね?」

 「インデックスの使えない君なら僕だって負けはしない」

 「ふふふ言うね? 小手先に頼る君が僕の分割思考を超えられるかね?」

 内容こそ物騒だが口調は軽い。
 単純に言葉をぶつけ合ってじゃれているだけなのは2人の顔を見れば一目瞭然だった。

 そんな2人を見てフェイトは思う。

 (こんな風に言い合える友達が、私にも出来たんだ)

 脳裏によぎるのは栗色の髪の少女。
 始めは敵として。そして友となった大切な人の姿だった。


 「分割思考も戦力差を計算できないとはね。最近はデスクワークばかりで勘が鈍ってるんじゃないか?」

 「そう言えば言ってなかったさね? 先の事件のおかげでインデックスの使用は僕の判断に任されてるんさね」

 「私闘に使用許可が降りるわけがないだろうが!」

 「いやいや訓練だからね! 存分に戦っていいさね! どうせ処理は養父さんがするんだしね!?」


 (…………や、やっぱりちょっと違うかも…………?)


 大分違う。


 †



 クロノ達と別れて無限書庫の整備計画について打ち合わせも終わり、帰ってきたのは17時頃になっていた。
 今日は遅くなると解っていたので夕食は久しぶりに外食にしようかと言っておいたし、あまり気にしてない。

 「しかし……そろそろ隠蔽も限界かね……」

 数時間前、クロノが言ってたロストロギアの痕跡を本局が捜査しているという話。
 しかも1級捜索指定の超危険物とレティ提督に言わせるほどのもの。
 心当たりがあるどころの話じゃない。なにせ犯人とは共犯関係なのだから。

 「まあ、それでも半分以上は稼げたしね。まだ予定のうちだーね」

 『先日の上位竜との戦闘は危険すぎると判断します。今後は避けるべきかと具申』

 「う……あれは流石に無茶すぎたと思ってるさね……」

 いや実際に恐ろしい経験になったのだから笑えない。
 人間無茶はいかんね。分相応に生きなきゃ駄目さね。
 中位竜ならまだ大丈夫だけれど上位竜は本物の化け物だ。

 デカイから当てやすいとか言っていたのは最初だけ。
 本気で食われると思ったもんね!

 まあ、一気に20頁くらい稼げたからいいんだけど。

 「……あの竜、もう絶対に人間と契約はしないだろうね」

 『竜は誇り高い生き物です。個人への恨みを種族全体に引き摺りはしないと判断します』

 「アハハそれってつまり僕だけが恨まれてるって事ですよねー」

 憂鬱だ。
 よりにもよって上位竜に恨まれるような事をして、そして更に恨まれなくてはならないのだから。
 この件が終わったら何処へ逃げましょうかねーもう本当に勘弁してほしいのねー…………

 「ただいまー」

 憂鬱な気分はそのへんに棄てて家に帰る。
 考えたところで始まらない。僕はもう選んだはずだ。
 ならあとは進むだけだ。そうだろう?

 「あ。おかえり弓弦にい」

 「おかえりなさーい!」

 「お疲れ様です、弓弦」

 「弓弦さん、おかえりなさい」

 「(ぺこり)」


 …………ああ。そうだね。選んだのだからね。
 この暖かい場所を、悲しい結末なんかで終わらせないって決めたんだからね。

 護ろう。
 はやての命も。そしてはやての家族も。

 終わらせよう。
 もう闇の書なんて呼ばれなくてもいいように。


 「ただいま。みんな」


 空っぽで虚ろだった僕を拾ってくれたのは大きな掌。
 すまなかったと謝るその人の涙に濡れた手を、僕は振り解けなかった。

 誰を憎めばいいのかなんて考えもしなかった。
 そんな心は壊死していたのだろう。

 でもあの人達は僕に心をくれた。
 暖かくて、ときどき痛い事もあったけれど、幸せだと思った。

 だから、はやてと初めて会ったとき思ったんだ。

 この子にとっての僕が、あの日僕の手を掴んでくれた掌になれるかなって。
 はやてが転んだときに、僕が手助けしてあげたっていいんじゃないかって。


 「よーしそれじゃあ時間もいい頃合だね。みんな何が食べたい?」


 「はいはい! 回ってない寿司!」

 「回っててもええからお寿司がええなー」

 「あ、いや今日はテレビでお寿司の特集があったので…………」

 「お寿司は家じゃ食べられませんからねー」

 「(私は留守を預かります)」


 普通で、暖かな家族の声に、自然と笑顔になっていく。本当に楽しくってしょうがない。


 「駄目だぞザッフィー! 危険なんてないんだし一緒に行くさね!」

 「(いやしかし…………)」

 「ええい、言い訳無用さね! いいから着替えてくるさね!!」

 テキパキと電話してタクシーを2台手配する。
 はやては僕かシグナムが抱きかかえていけばいいし車椅子はお留守番さね。
 本当は運転だって出来るんだけど、流石にそこまでの年齢偽造はやめておいた。

 酒と煙草? 肉体的な問題がないんだからそっちはいーの!
 ぶっちゃけ手続きが面倒だってのもあるんだけどね!

 「……なあはやて、なんか弓弦にいが壊れてねーか?」

 「失礼な事を言うヴィータはお留守番決定さねー、さあ皆タクシーが来るまでに準備しようねー」

 「ちょ、ごめん! ごめんってば弓弦にい!」

 有言実行。やると言ったらやる男だよ僕。




 因みに。回らないお寿司は非常に美味しかったとだけ言っとくさね。
 ……………………なんさね。財布が軽くなったのは言うまでも無い事さね。


 †


 闇の書。残り194頁。


 †


 あとがき。

 羽山:もうね。あれだ。いい加減にしろって感じだよね。
  律:と言うか私『なのは』見てないんだよ。
 羽山:ぶひゃひゃ! 私だって『とらハ』は未プレイさ!
  律:それで、今回は何を言いたいわけ?

 羽山:今回の最後に闇の書の残り頁を出したじゃん?
  律:ああ、あれって何なのさ。

    (説明中)

 羽山:つーわけでリンカーコアから魔力を蒐集してるわけだよ。
  律:んで原作だとこの時点での残りは326頁とか言ってたよね。
 羽山:そーそー

  律:↑少なくね??

 羽山:んっとね…………
    @蒐集は10月29日から開始されたと仮定。
    A蒐集は2人1組で昼中と深夜に行ったと仮定(昼間にシャマルとシグナムが一緒にいたシーンなかったっけ?)
    て条件で大雑把に1日の平均蒐集頁を大・雑・把!に出して。

  律:大雑把なんかよ。

 羽山:大雑把よ。面倒だし。
    その平均蒐集頁を2人1組じゃなくて、3人2組にして計算してみたらえっらい事に……
    内訳はヴォルケンリッター2人1組とうちのオリ主君1人ね。

  律:それどっかで計算間違ってるって。
 羽山:知ってる。そもそも騎士チームが稼ぐ頁をオリ主君は1人で稼いでる計算になってたしね。
  律:再計算は?
 羽山:正直メンドイ。
  律:それにしたって数字が合わないんじゃない?
 羽山:おお。さっきの計算で出した数字は『参考』程度にしか使わなかったしな。

  律:…………………………………………
 羽山:…………………………………………
  律:お前馬鹿じゃね?
 羽山:蟲も殺せぬような笑顔だったらステッキーやったのに何その不細工な顔。

  律:ぶさっ!? 死ぬか!?

 羽山:ごみんちゃい!



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