Fate「無限の世界」Act.9

〜日常(2)〜





 ◆


 夢をあまり見ない性質なのか、俺の目覚めはいつも唐突で味気無いものだ。
 だから俺はいつもと同じように日の出前に目を覚まして──────────────

 「・・・なんでさ。」

 ──────────────何故?Why?意味がわかんねーよ。

 「「「・・・・・・」」」

 俺の布団を挟むように布団を敷いて眠る3人の少女・・・微妙。訂正、女性達。
 右側に凛と桜が抱き合うようにして寝息を立てているし、左側にはセイバーが静かに寝ている。
 しかし健全な青少年にこの状況は刺激が強いような、そうでもないような?

 「あー・・・、まあやる事はいつもと同じだよな。」

 3人を起こさぬよう気を付けて布団を抜け出して、着替えを漁る。流石に此処で着替える訳にはいかないだろ。

 「起きたのですね、シロウ。」

 「──────────────っ!!」

 振り返れば、セイバーが起きていた。
 横になったまま目を開けてこちらを見ている。

 「あ、ああ。悪い。起こしちまったか?」

 「いえ。シロウが起きる気配がしたので。」

 「?なんでさ。まだ朝早いんだし、寝てていいんだぞ?」

 「サーヴァントにそのような気遣いは無用・・・と言っても聞かないのでしょうね。貴方は。」

 ヤレヤレ。なんて首を振って溜息をこぼすセイバーさん。あれ?何でか違和感。何でだ?

 「ああ、聞かないね。サーヴァントだろうが人格も身体もちゃんと存在しているんだ。道具扱いなんてしない。」

 凛が聞いたら、と言うか世界中の魔術師が聞いたら笑うだろうな。きっと。
 でも道具にだって通すべき筋があると思う。それは絶対に間違いじゃないと信じる。

 「まあ、こういう奴に召還されたんだと諦めれ。」

 「あ・・・いえ、シロウの心遣いはありがたいのですが、それでは無用な隙を───────────」

 「はいはい。議論はここまで。あんまり騒いでると2人が起きちまうだろ。」

 取り出した着替えを持って、障子を開ける。冬でもあまり寒くならない冬木だが、流石に朝は冷えるな。
 今日は昨夜の戦闘で得たものを確認するって意味でも鍛錬したいな。うん。今日も道場で鍛錬だ。

 振り返ってセイバーに伝え──────────────ようと思ったけど危険!


 「──────────────セイバー。俺が買ってやった寝間着はどうした?」


 「・・・?眠る時は常に裸ですが?」


 身体を起こしたセイバーは裸でした。ええ。下着を付けてると苦しいよね?でも服は着ような?
 朝っぱらから精神的な疲労感が蓄積されるのが堪りません。もう、どうしてくれやがりましょうかね。
 冷えた廊下に出て、さっさと障子を閉める。ふう。視覚からのダメージはこれでよし。

 「起きるんなら、ちょっと道場で鍛錬に付き合ってくれよ。」

 返事を聞いて、俺はさっさと脱衣所へ向かう。・・・ったく。どうしてくれんだよこれ・・・
 決して下を見てはいけない。自己主張が激しすぎるが、この作品は健全なのだ。怒られるぞ。誰かが。


 ◆


 さて、着替えもすんだ。ご飯もセットしてきた。うむ。準備は万端だ。
 雑巾をバケツをしまって、綺麗になった道場を見回す。ふ。見ろ。塵一つ落ちていない!

 「・・・シロウ。これから鍛錬で使うのに、先に掃除してどうするのですか?」

 「・・・セイバー、これから鍛錬で使うからこそ、先に掃除したんだ。と言い訳したい。」

 竹刀片手に呆れるのはセイバー。いや、なんか床が汚れてるかなーとか考えたのが失敗だった。
 俺はあらかじめ投影して、ちょっぴり仕掛けまで仕込んだ竹刀を取り出す。今日は2刀でいこう。
 脇差よりは少し長め、小太刀程度の竹刀を手に道場へ戻る。ん、よし。

 「流石に直感持ちのセイバーと戦うには、このままじゃきついか。」

 つーわけで同調開始。
 鋼の魔力が浸透して、身体性能が向上。空間認識速度の上昇。

 「あ、セイバー。俺投影とか使ってもいいか?」

 「かまいません。単身で英霊に挑むその傲慢、矯正してさしあげましょう。」

 あ、まだ昨夜の事を根に持ってやがるな。いいじゃねえか。


 「──────────────お願いします。」






 暫くお待ちください。






 あ、朝日だー。あはは、今日もいい天気になりそうだなー
 うん。もう俺は駄目かもしれないけれど、お前らは頑張って生きロー?

 「・・・何を笑っているのですか、シロウ。」

 「うわあい。セイバーさんってばマジで怒ってらっしゃるんでしょうか?獅子が見えるよ百獣の王。」

 まあ、試合も終わって居間へ戻ったのだが・・・

 「いや、騎士道とか言われても俺は騎士じゃねえし、そもそも剣士ですらねえんだけど・・・」

 「だからと言ってあのような小細工は──────────────!!」

 ・・・なんだな。ちょっと竹刀に変化で「雷撃」の属性付属していたのだが、これがいけなかった。
 元にケラヴノスをイメージして雷撃を織り込んだら、これがまた派手に驚いたのだ。
 ちょっとセイバーが香ばしい。いや嘘だけど。それぐらいセイバーには衝撃的だったみたいだ。

 「つってもなあ・・・」

 「まだ何か隠し事があるんですか!?」

 いや隠してるって言ったらそんなの山ほどあるけどな。マジで。
 俺が気にしているのはそんな事じゃなくて・・・

 「やっぱ電流で人の髪はアフロになんかならねえよな。」

 「──────────────それが最後の言葉ですか、シロウ・・・」

 「ううん。勿論ただの軽い冗談さ!」

 ただな?


 「再戦であれだけ人を襤褸雑巾のように殴りまくったくせに、飯の準備を強制させられとんですかね私?」


 もしかしてセイバーってご飯が好きなのか?・・・ならいっか。

 「もうすぐ仕度できるから。もうちょっと待て。」

 「はい。───────────ではなく、シロウ。話をずらさないでいただきたい。」


 うう・・・God、俺なんか悪い事しましたか・・・?
 うん。したね。決めた。セイバー相手に鍛錬する時は絶対に小細工はしないでおこう。絶対負ける事になるけどさ。


 ◆


 「あ〜・・・身体が痛え・・・」

 「そりゃ全身打ち身や捻挫だらけだもの、何やったのよ。」




 「セイバーと試合した。」




 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・何故黙る。

 「せ、先輩。サーヴァントと戦うなんて正気ですか・・・?」

 なんだよ。そんな精神病患者を見る様な微妙な視線は。凛までそんな目で俺を見るな。
 ・・・2人とも俺の魔術、と言うか性能は多少知って・・・ても正気の沙汰じゃねえか。やっぱ。

 「いや、試合ではこんなボロボロになってねえんだけどよ。」

 あ、信号が変わっちまった。ちょっと待つ。・・・よし青になった。
 朝の登校だが、たまにこうして3人で並んで歩く事がある。主に凛が泊まった日とかに。
 何でか魔術の鍛錬とか家でやる事が多い・・・いや殆どか。
 もうすっかり家の一員みたいなもんだ。凛も桜も・・・藤ねえは・・・ありゃ野獣だ。

 「竹刀に仕込んだ雷撃で感電してな?それで俺が一本とったんだが、再戦する事になって。」

 「・・・ちょっと、セイバーの対魔力ってAランクでしょ?」

 「え・・・?ちょっと先輩、それって・・・」

 「んー?まあ変化の魔術だけじゃ無効化されるわな。ただ織り込む雷撃のモデルにケラヴノスを──────」

 途端に2人の顔色が変わる。漂白されて青くなり、あ。赤くなった。

 「先輩!そんなの受けたらいくらセイバーさんだって・・・!」

 「いや手加減はちゃんとしたぞ?出力の低いスタンガン程度に。」

 「そっか、宝具を大元に設計して変化させてるから、効果は弱くても霊格は宝具と同位・・・でも・・・」

 ぶつぶつと思考に沈む凛。あーなんでもいいけど前見て歩け。じゃねえと、


 ──────────────ごっ!


 ・・・電柱にぶつかるぞー

 「・・・何やってんだ、凛?」

 「・・・なんでもないわよ・・・」

 ならそんな殺人光線もかくやといった視線はなんだ。背に氷塊が滑り落ちる錯覚。怖すぎる。
 気を取り直して道を歩く。時間的にはかなり余裕があるのは、俺の都合でもあるのだが・・・

 「多分凛が考えてた疑問の答え。ケラヴノスってもともと固有の形状がねーだろ?」

 「・・・あ、つまり普通の魔術と同じように?」

 「ん。桜さん正解です。景品はねえけどな。残念。」

 単にケラヴノスを投影するだけなら雷として投影すればいいだけなんだけどな。
 なんつーか、形状を偽造すると難易度が跳ね上がって、矢としてしか使えねえんだよ。
 その点で言えば、こういう宝具は雷撃という属性を魔具に付属させるのに相性がいいのだ。

 ・・・そうだな、例えば発火するには燃えるものと種となる火が必要となる。
 魔術で火をおこすにしても、何も消費せずに火が灯るわけではない。
 魔力という燃料を回路という機構に流し込んで、正しい手順を踏んでようやく火がつく。

 ケラヴノスを変化させるのも、どちらかといえば投影の手順に近い。
 強化が魔力で隙間を埋めるものであるならば、変化は魔術で隙間を埋める。

 隙間に埋めるものが純粋な魔力か、ライターやスタンガンかの違いに過ぎない。
 まあ、それにしたって難易度は比べようもないのだが。
 単純に俺でも使える魔術を付属させるだけなら1ヶ月くらい余裕で性能維持するのだけれど、
 宝具級の幻想を付属させるとなると保って1時間程度。いやあ燃費が悪いねえ・・・

 そんな事を、幾ら人気が無いからって天下の往来でくっちゃべるほど凛は甘くない。
 俺たちの会話を周囲には変換して聞こえる様にちゃんと魔具を持っている。俺謹製。

 んで、暫くして学校に着いたわけなんだが・・・


 「・・・・・・おいおい。聖杯戦争ってのは馬鹿が外から阿呆みてえに集まってくるのか?」


 校門で立ち尽くす。凛や桜も険しい顔付きで校舎を睨む。
 しばらく高校も休んでたし、いつ設置されたのかは不明だが、紛れもない宝具。
 解析結果。タイプは対軍宝具。用途は魔力吸収。・・・効果、結界内の人間を溶解して使用者に吸収される。か。

 ・・・・・・馬鹿か?いやマジで訳がわかんねえ。此処までやる馬鹿が実在すんのか?するんだな、実際。
 ははは。楽しすぎて笑えるね逆の意味で。あれか?馬鹿の博覧会かなんかか?くそったれ。

 「イリヤは違う。あれはバーサーカーだったし。こんなのに手を出したりしない。」

 解析終了。結論、発動までにはまだ余裕があるから今日中に魔術殺しの礼装でぶち壊す。
 ・・・破戒すべき全ての符じゃ、壊せないか。結界崩す首入れの袋では発動してからでなければ意味が無い。
 

 「あっちゃあ・・・忘れてた・・・」

 「あ?」

 凛が顔を顰めて、ヤッチャッターってな感じで手を顔に当てている。

 「あ、あはは・・・昨日の時点で結界は気付いてたんだけど・・・その、相談するの忘れてたわ。」

 あはは〜なんて軽やかに笑いやがりますか。そうですか。うっかり魔め。
 まあ、発動には魔力が足りないと判断して、後回しにした挙句に忘れたのだろう。殴っていいか?

 「・・・そんな・・・兄さん・・・」

 「ん?大丈夫か、桜。気分が悪いのか?」

 見ると、桜の顔色が悪い。蒼白を通り越してすでに土気色になっている。

 「え、あの──────────────大丈夫です、なんでも・・・ないです。」

 それにしては只事とは思えぬ様子ではあるが・・・
 なんでもないと繰り返す桜にそれ以上は言えずに、門を抜けて弓道場へ向かう。
 結界の問題は保留。いくら朝早いとは言え、部活動に励む生徒や教師がいる中で魔術は使えない。


 クソッタレ。



 ◆


 ──────────────トン。

 手から離れた矢は弦に引かれ、正しく想定した軌道を描き中る。
 結果に満足などない。中たるように想定して出た当然の結果に感慨などあるはずもない。

 だというのに、

 「・・・へえ、いつ見ても衛宮の射は外れ知らずか。やるじゃん。」

 こうして言ってくる奴もいる。困ったもんだ。そんな事を言われて、俺はなんて言えばいいってんだ?
 振り返れば、そこに間桐の長男で桜の兄たる間桐慎二がいた。
 思えばコイツとの付き合いも長い。お互い腐れ縁みたいなもんだな。

 時折俺から魔具を買っていったり、ふらりと屋敷に現われては他愛ない世間話をして帰っていったり。
 我が事ながら、本当に不思議な関係だと思う。まあ、多分悪友って表現が適切だと思うが。

 「遠坂がいるし、少しは気にしたりしないわけ?」

 「するかよ。凛は魔術の師だけど、別に弓の師ってわけじゃねえんだし。」

 たまーに慎二はこういう冗談を口にする。
 別に意味は解るが・・・慎二よ。夢を破壊されたくなかったらそれ以上は聞くな。

 「そういや、この前買ってった魔具はどうだ?製作者としては、意見を聞いておきてえんだけどよ。」

 「ああ。僕じゃ魔力を生成できないからね。マキリの工房みたいにマナの多い場所じゃないと使えないよ。」

 「・・・まあ、そうだわな。しかし大丈夫か?蟲殺しの符なんか買って。」

 何せ実の祖父が蟲なのだから。そんな物買って家庭崩壊しねえのか?つーか祖父殺し?

 「いいんだよ。ったく、僕の部屋に蟲を入れるなって何度言えば解るんだか・・・」

 ・・・ああ。成程ね。たしかに帰ってみたら部屋が蟲だらけってのは・・・うお、想像したら鳥肌がたってきた。
 部屋に侵入させない為か・・・なら、むしろ蟲除けのほうが安いし、置いておくだけで効果があるな。

 「蟲除けなら、慎二の部屋でも使えると思うが・・・それに安いぞ。」

 「え、何そんなのあるの?先に言えよ衛宮。・・・で、幾らだ。」

 「・・・こんなもんッスね、お客さん。」

 「・・・ちょっと高くないか?ただの蟲除けだろ?」

 「・・・阿呆。これでも原価ぎりぎりの値段なんだぞ。蟲殺しを返品するか?」

 「・・・あれも一応手許に置いておきたいんだよね。いざって時に手がないと困るし。」

 朝から物騒な会話してるなー俺ら。周りから好奇と不振な目で見られてそう。
 実際に凛や桜からは不振そうに見られてるし。あの、桜さん?何故に頬を染めてらっしゃるんでしょうか?

 「・・・ったく、じゃあこれで。これが原価だから、これ以上は無理だ。」

 「・・・わかったよ。支払いは現金のほうがいいんだろ?」

 「うむ。実は最近出費が激しくてな。これ以上増えると材料すら仕入れられなくなっちまう。」

 セイバーに買った服や、食費はまだいい。想定外の出費だがまだいいったらいい。
 問題は凛が買った宝石だ。聖杯戦争前に手持ちの武器を増やしたかったのだろうが・・・何故弟子に払わせる!

 溜息をついて、道場の隅まで下って座る。
 射場を眺めれば藤ねえが元気に指導して、部長の綾子が1年の面倒を見ている。平和だね。
          モノ
 ・・・こんな物騒な結界がなければもっと平和だと思えるんだけどな。
                     サイン
 入ってみりゃびっくりだ。間違いなく結界の刻印の一つが此処にもある。
 消してやりたかったが、すでに綾子がいたので出来なかったが・・・むう・・・

 「あ、そうだ。」

 「ん?どうしたんだよ、衛宮。」

 「昨日は桜が家に泊まっていったから弁当ないだろ?俺が作ったやつでよけりゃ慎二の分も用意したんだが。」

 桜が家に来ると、間桐家の食卓事情は大いに問題を抱える事となる。
 昨晩は夕食を作ってから来たのだろうが、朝食までは面倒みきれてないだろう。
 そういう事が何度かあって、慎二に、

 『衛宮!桜がお前の家に行くようになったら僕の食事はどうするんだよ!!』

 意訳すればこんなよーな事を言われたので、こうして昼飯を用意してやったりするようになった。偶にだけどな。

 「ふん。衛宮は気が利くじゃないか。新都にでも食べに行こうかと思ったけど、衛宮が用意したって言うなら、
  折角だしそれを貰おうかな。食べ物を粗末に出来ないしね。今日も屋上か?」

 「素直に金が無いと言えよ。・・・そうだな。屋上か・・・それか生徒会室で食うか。」

 「屋上に決まってるじゃん。どうせ遠坂達も一緒なんだろ?生徒会室に詰めたら狭くて仕方ないからね。」

 決定だな。あ、一成にも伝えておかないとな。一成の弁当は徹底的に肉分が不足しすぎだ。


 ・・・そろそろ時間だな。朝練を切り上げるには早いが、今日は予定もある。
 俺は立ち上がって更衣室へ向かう。途中、慎二が何か呟いたが聞こえなかった。





 「・・・まったく、そんなんじゃ死ぬよ?衛宮。」




 ◆


 授業開始まで、あと35分ってとこか。
 あんまし時間もねーな。さくさく片付けていこうか。
 一成に頼まれて、古くなって廃棄寸前のストーブの修理に奔走する。

 「しっかし、うちの学校も極端だね。弓道部はあんな立派は射場まであるのに。」

 「まったくだ。なんとしても任期中に正さねばならん。喝っ。」

 いやそんな戯言に一々決意を新たにしなくても・・・
 柳洞一成は高校で知り合った友人だが、その容姿とは裏腹の堅物だ。流石は寺の子。むしろ性分か。

 「・・・そういや、一成が俺と知り合ったのもストーブが縁だよな。」

 「そうだな。・・・藤村先生も困ったお方だ・・・」

 お互い虎の事でシンパシってしまう。
 あれは去年の春だったか。藤ねえが視聴覚室のストーブが壊れたからって生徒会室のストーブを持ち出したんだ。
 そんで、壊れているストーブを生徒会室に運び込み、

 『士郎ー、これ直して〜』

 などと俺を拉致して修理させやがった。その時に生徒会室にやってきたのが一成。
 まったく。藤ねえめ。学校では藤村先生って呼べとか言うくせに、俺の事はたまに素で名前で呼びやがるが。

 「・・・まあ、良縁であった。」

 「あ?なんか言ったか?つーかそのドライバーとってくれ。カバーが外せん。」


 まあ、そんな無駄話しながらもさくさく作業は進んで、予定より多く周れた。


 ・・・ただ、行く先々で、たまに見かける刻印が、堪らなく不気味ではあったが。


 ◆


 「・・・シロウ、これは朝の報復ですか・・・?」

 山のように詰まれた大量の剣と、一つのメモ。
 そこにはこう書かれていた。


 『俺が学校に行ってる間、セイバー暇だろ?だったら、土蔵の隅に置いてあるロッカーの中に剣があるから、
  それの手入れしといてくれねーか?いやいや、暇ならでいいんだ。けど、残念ながら俺は全身が酷く痛む。
  何故かは解らないが酷く痛むんだ。そんな身体じゃあ手入れなんて出来そうもないよ。はっはっはっは。
  やり方は大体解るだろ。解らないのがあったらラインで聞いてくれ。あ、ロッカーの鍵も置いてくから。
  ────────────────────────────じゃあ、頼むなセイバー

  追伸。もし、あの女性が起きたら連絡くれ。よろしくー』


 剣。剣剣剣。たまに刀や槍や弓が腐るほどある。
 セイバーを召還する際に投影した宝石剣を使いまくって、朝食の前後に士郎が投影したものだ。
 いやー、本当に反則技って感じだよね。宝石剣。まあ、副作用の問題もあるのだけれど。
 それは鞘や秘薬でなんとか治療できるし。ケケケ。


 「・・・はあ・・・仕方ありませんね・・・」


 諦めたように呟く。まあ、あれは確かに大人気なかったと反省もしている。
 とりあえず解りやすい西洋の剣を手に取って鞘から抜き──────────────


 「ふむ・・・私が扱うには大きすぎますね・・・む、これは美しい。ハモンというものですか・・・」



 結構楽しそうだった。









 「──────────────♪」

 「姉さん。随分と上機嫌ですけど、何かいい事があったんですか?」

 「桜だって浮かれてるでしょ。」

 「えへへ、解ります?実は先輩がお守りをくれたんですよー♪兎ですよ!」

 「へえ、良い出来じゃない。可愛いし。しかも対魔力を強化してあるわね。Cランクなら無効化できそうよ。」

 「そういう姉さんは?」

 「私は宝石よ?1つだけだけど、結構な魔力が籠められてるわね。」

 「わ、すごい9000近いです。えっと先輩の魔力総量って・・・」

 「たしか300くらいだったわよ。・・・まったく、同位体から魔力まで継承するなんて・・・」

 「と言うことは、先輩の魔力約2ヶ月分ですね。・・・いいなあ・・・先輩の温もり・・・」

 「・・・ごめん桜。ちょっと引いたわ・・・」





 
 「・・・実は桜のお守りは手抜きで、凛の宝石は出費を抑える為だなんて・・・言えねえよなあ・・・」

 「馬鹿だな衛宮は。あれで遠坂が宝石を買うのを控えると思うのかい?」

 「・・・やっぱり?つーか1つ『だけ』とか言いやがったぞアイツ!!」

 「あれで結構な値段なんじゃないの?」

 「・・・・・・──────────・・・」

 「っ!?そんな!オマエ馬鹿か!?本末転倒じゃないか!!」

 「・・・ちなみに先月の宝石で立て替えた金額は×百万円。それを思えば・・・」

 「生きてて辛くないか、衛宮。」

 「・・・・うっううぅ・・・・」





 ◆


もりもり元気が湧いてくる!